ホームページ制作は、企業にとって決して安くない「投資」です。
にもかかわらず、多くの発注者が「プロに任せれば、勝手に良いものが出来上がる」と誤解し、失敗しています。
結論から言えば、その認識は危険です。
Webサイトのクオリティは、制作会社の技術力だけでなく、発注者側の「準備(熱量)」で決まります。丸投げされた案件で、最高のwebサイトができることはまずありません。
この記事では、現役のWebディレクターの視点から、「失敗しないプロジェクト」にするための、発注側のロジック(準備と心構え)を解説します。
1. 心構え:制作会社は「魔法使い」ではない
まず、大前提となる考え方を変えましょう。
Web制作会社は、デザインとコーディング、そしてWebマーケティングのプロです。しかし、あなたのビジネスのプロではありません。
「業界の習慣」「自社の強み」「顧客のインサイト」を一番理解しているのは、依頼者であるあなた自身です。
多くの制作会社が「素材や原稿をご用意ください」と言うのは、意地悪ではありません。魂(コンテンツ)を込められるのは、あなたしかいないからです。
制作会社を単なる「業者」として扱うのではなく、ビジネスを加速させるための「パートナー」として使い倒す気概を持ってください。
2. 制作会社を動かす「事前準備」6つのロジック
見積もりを依頼する前に、以下の6つを整理してください。これは単なる準備ではなく、プロジェクトの核となる要素です。
① 課題の言語化(Why)
「なんとなくデザインが古いから」ではなく、ビジネス課題に落とし込んでください。
解説
- 課題例: 電話での問い合わせ対応に追われている
→ 「Webで自己解決させたい」 - 課題例: 求人媒体にお金をかけても応募が来ない
→ 「自社サイトで社風を伝えたい」
課題が明確であればあるほど、我々ディレクターは「デザイン」ではなく「解決策」を提案できます。
② 目的の明確化(Goal)
課題を解決するために、どんなサイトを作るべきか。「コーポレートサイト」と言っても、目的によって作りは全く異なります。
解説
- 名刺代わりの信頼獲得なら → コーポレートサイト
- 人材獲得なら → 採用特化サイト
- 集客・販売なら → LP(ランディングページ)やECサイト
ここがズレていると、高額な費用をかけて「誰も見ないサイト」を作ることになります。
③ ターゲット設定(Persona)
「誰に」届けたい情報ですか?
BtoBなのかBtoCなのか。ターゲットが「50代の男性」か「20代の女性」かによって、デザインの正解(文字サイズ、配色、導線)は180度変わります。
実在する人物を思い浮かべるレベル(ペルソナ設定)まで落とし込むのが理想です。
④ 予算の提示(Budget)
「いくらかかるか分からないから言えない」と予算を隠すのは、お互いにとって不幸です。
Web制作は「お任せコースの寿司屋」と同じです。「予算は100万円」と言われれば、その中で最高の素材を使ったコースを組みます。「30万円」なら、工夫して満足度を高めるランチコースを提案します。
予算を隠して「とりあえず見積もり」を出させるのは、時間の無駄です。
「MAXで〇〇万円までなら出せる」と正直に伝えることで、その予算内で最大の効果を出す提案を引き出せます。
⑤ 公開日の設定(Schedule)
Web制作は、想像以上に時間がかかります。一般的なコーポレートサイトでも3ヶ月〜半年はザラです。
「来月公開したい」という無茶なオーダーは、品質低下に直結します。
「いつまでに公開しなければならないのか」というデッドラインを決め、そこから逆算してスケジュールを引いてもらいましょう。
⑥ 運用体制(Operation)
Webサイトは「公開した日」が「スタート」です。
完成後、誰がニュースを更新するのか? 誰が問い合わせに対応するのか?
社内で更新したいならCMS(管理画面)の導入が必要ですし、任せたいなら保守契約が必要です。ここを曖昧にすると、公開後すぐにサイトは廃墟化します。
3. 「ハズレ」を引かないためのチェックポイント
初回打ち合わせは、制作会社があなたを審査する場であると同時に、あなたが制作会社を見極める場でもあります。
以下の視点で、パートナーとして相応しいかチェックしてください。
ヒアリング力と「NO」と言える強さ
あなたの要望に対して、すべて「できます!やります!」と答える会社には注意が必要です。それはただの「イエスマン」かもしれません。
優秀なディレクターは、あなたの要望がユーザーのためにならない場合、はっきりと「NO」を言います。
- 「そのデザインだとスマホで見づらいです」
- 「その機能は予算オーバーなので、代わりにこのツールを使いましょう」
このように、プロの知見から代替案を出せる会社を選んでください。
得意分野のマッチング
制作会社にも「型」があります。
解説
- デザイン特化型: とにかく見た目が美しい(ブランディング向き)
- マーケティング特化型: 集客やSEOに強い(売上アップ向き)
- システム特化型: 複雑な機能開発が得意(EC・ポータルサイト向き)
「なんでも出来ます」は「なんにも強みがありません」と同義です。あなたの制作目的を得意とする会社か、実績を見て判断しましょう。
担当者の「熱量」と「相性」
結局のところ、Web制作は「人」と「人」の仕事です。 会社の知名度や実績が素晴らしくても、目の前の担当者(ディレクター)と話が噛み合わなければ、プロジェクトは失敗します。
- こちらのビジネスに興味を持ち、面白がってくれているか?
- 専門用語を並べるだけでなく、分かりやすい言葉で説明してくれるか?
- 「この人と一緒に、走り切れるか?」
この直感は意外と当たります。 スペックだけでなく、「ビジネスパートナーとして信頼できるか」という相性を、シビアに見極めてください。
4. 制作決定前の最終確認リスト
契約書にハンコを押す前に、最後の確認です。
[ ] 制作の「目的」と「ゴール」は共有できているか?
[ ] ターゲット(ペルソナ)不在のデザインになっていないか?
[ ] 提示した予算内で、何をどこまでやるか明確か?
[ ] 公開後のランニングコスト(サーバー代・保守費)を把握しているか?
[ ] 担当者との相性は良いか?(ここが一番重要です)
まとめ:発注力を高めよ
Web制作は、発注者と制作者の「共犯関係」です。
どちらか一方が優れているだけでは、良いモノは生まれません。
あなたが本気で準備をし、熱量を持って課題をぶつければ、私たちクリエイターも「なんとしてでも成果を出したい」と本気になります。
より良いWebサイトを作るための最短ルート。
それは、制作会社選びに悩む前に、あなた自身の「発注力(準備と熱量)」を高めることです。
Logicを持って準備し、Whimsy(遊び心)あるクリエイティブを実現しましょう。
忘れないでください。Webサイトは「作った日」が「スタート」です。 どんなに立派なサイトも、運用しなければただの廃墟になります。 だからこそ、制作後も親身になって一緒にサイトを育ててくれる会社を選びましょう。それが成功への最短ルートです。

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